解説その1

今回のエッセイでは、まずガンプラの説明をしてから、販売方法について2つの問題点と解決策を提示しています。まず一つ目の問題点を簡単に。
問題点1:「1つの商品はいずれ飽きられるし、やがて市場は飽和する。新しい物のクオリティが前よりも低ければ、結果として市場は冷え込む」
解決策1:「ガンプラはあくまで同じ物を売り続け、同時に誰の目にもクオリティのアップを実感できる新製品を開発し続ける」

この解決策1についてですが、実はマジックも同じ事をしています。
 「新製品」。そう、トレーディングカードゲームである以上、定期的に新製品を出す事は販売方法で必要不可欠です。新製品が出ない・サポートが打ち切られる・Webも更新されない。そんなTCGが世の中に何十種類となく存在する中、マジックは新製品を出し続けています。毎年毎年10月2月6月に確実に「カード買わなきゃ〜」と財政難に苦しみ、10月20日に確実に「せっかく買ったのに使えなくなった〜」と苦悩するマジックプレイヤーは、生産打切りになったTCGのプレイヤーから見れば『新婚カップルのノロケ』にしか見えません。
また、現在順調に売上を伸ばしている遊戯王ガンダムWARデュエルマスターズについても、「定期的に新製品を発売する」という点ではマジックに劣っています。いつ新製品がでるのか、どういう内容なのか、といった情報を雑誌やWebや店頭などで調べないと分からないTCGと、既に発売時期が確定し、3つのエキスパンション単位で1つの世界観で統一させると明言しているTCG。新製品を出すという意味で、どちらが望ましいかは言うまでもありません。

もう一方の「同じ物を作り続ける」事も、マジックでは当り前の事です。マジックの場合は2通りの意味で「おなじもの」を作っています。
まずひとつは、「マジック基本セット」の内容。中村聡氏が著作で書いている一文が全てを現しています(「第4版? 第4版なんて買わないよ。だってもう全部持っているもん」)が、マジックの基本セットは、古くからマジックを遊んでいる人には買う必要性が薄く、なおかつ買う必要性がある初心者にとっては古くから存在するカードを安価&新品で手に入れる、絶好の商品です。 例えば、第四版で遊び、第五版になってから辞めたような人が今の第八版を買ったとするなら「《サバンナ・ライオン/Savannah Lions(8ED)》が復活している!」というのは魅力的な話だと思います。(《地獄界の夢/Underworld Dreams(8ED)》が復活している! と喜ぶ人は少ないだろうなぁ(笑))
もうひとつは「マジックのルール」。例えば、もし私が今この瞬間にマジックを辞めて、5年後に再開しようとしてシールド戦の準備をしたなら、その時点でマジックを楽しめる自信があります(勝てるかどうかは置いといて)。なぜならマジックの基本的な決まり事は変わらなかったし、これからも変わらないだろうから。1マナで出てくるパワー2のクリーチャーはどういうデメリットがあるのか確認するだろうし、3マナ2/2クリーチャーをデッキに入れるようにしつつ、持っている能力を検証し、6マナ以上のカードはデッキに4枚以上入れないようにして、基本地形は16〜17枚入れるようにする…。これは5年前もそうだったし、5年後も変わらずそのままでしょう。同じルールでずっと遊び続けられる。これはマジックのかなりの強みです。

> 確かにおもちゃは、数ヶ月あるいは数年単位のレンジで考えると“同じ物は売れなくなる”のです。少なくともおもちゃは生活必需品ではないのですから。しかしこれを10年なんてレンジで考えると“同じ物が繰り返し売れる可能性は十分にある”のです。そしてガンプラはそれを成功させたまさに典型なのです。

素晴らしい! マジックも又然りではありませんか!(爆笑) これまで発売されてきた数百のTCGと比べてみてください。93年に米国で産まれてから10年間、マジックは売れ続けています! 1年2年単位ならばブームがあります、流行り廃りがあります。では、10年間売れ続けた物ならば? ガンプラに比べれば歴史が半分以下ではありますが、マジックが積み重ねてきた歴史ってものも結構侮れないでしょう。